こころの休み時間―教師自身のメンタルヘルス


著者は、なんと、昨年ご逝去されたそうだ。それまで、某病院で普通に働いていたのに。。
労災認定されるだろうか・・・。

先生が壊れていく―精神科医のみた教育の危機
それはさておき・・・。

事例とそれに対する対応や取り組みが書いてあって、わかりやすい。管理職必読って感じ。


主な事例
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[環境の及ぼす影響による抑うつ状態]
異動や家庭環境の変化が原因となる抑うつ状態あるいは反応性うつ病。
喪失体験:教育の理想像の崩壊(困難校への転勤)、家庭と仕事の両立の失敗等
環境の変化を一挙に身に受けてしまい、十分な体験の消化ができないまま    に、病的な抑うつ状態におちいる。
回復方法:不適応を起こした環境からいったんしりぞいて、心身を安静に保つこと。学校を休んでの休養、家庭から離れての入院。

しかし、ただ休んでいればいいというものでもない。
少しでも回復しはじめたならば、次に、喪失体験の成り立ちを自分自身で洞察することが大切なのである。
つまり、
自分は何を失ったのか、それは自分にとってどういう意味があったのか、
そこまで影響を受けてしまった自分の性格はどこに問題があるのか、
などを、十分に時間をかけながらふりかえることである。
精神科や精神療法(カウンセリング)は、そのための援助であるといえるだろう。

理想の教育像の喪失の場合:理想と現実との折り合いをどこかでつけければならないだろう。できるだけストレスを抱えこまないで周囲に適応していくことが必要。


[性格による「つまづき」]
内向型:自分自身で考え込みすぎて適切な行動を起こすことができず、その結果自信をなくし、抑うつ状態におちいって自分のなかに閉じこもる。
回復方法:バランスの悪い過剰な内省性から身動きがとれなくなっている自分に十分に気づくこと、現実的な次元で物事を考えて処理すること。カウンセリング。サポート役の同僚。

外向型:自分にとって不利な状況から安易に逃避した結果、行き詰る。
安易な病気休暇は一時的な逃避を助長しこそすれ、マイナス。そのままいけば繰り返される。
回復方法:その場しのぎの行動を控え、もっと長期的な点から自分の利得をとらえ直し、それを教師としての責務に適合させるように努めること。


[こころの未熟性]
仕事の負担が増え、体調を崩したり、無断欠勤、摂食障害、出勤しようと考えているにもかかわらず出勤できないといった状況等におちいり、職場不適応となる。

こころの発達がいまだ不十分である、つまりこころの未熟性が認められる。これは性格上の未熟さということであり、すでに性格の偏りといえるかもしれない。

しかし、実際に学校現場において生徒指導上の困難や同僚との人間関係の行き詰まりなどの問題があり、なかばそれから逃避するように出勤できなくなるのである。

つまり、そうした心理的ストレスがこころの葛藤を生じさせ、それが本人の意識しない次元で身体症状に転換しているものと考えられる。

出勤拒否に対応するには、まず本人が意図的に出勤しないわけではないことを認めてあげることが大切である。そのうえで実際の学校現場での問題点の解決に向けて話し合うとともに、教師の責務についても改めて指導していくことが必要だろう。

若手だけでなく、中堅やベテランのなかにも、こうした問題が見られることがある。

未熟性を乗り越えるには、だれでも人間として発展途上にあるという謙虚な自覚をもって、単なる知識や処世術でない人生への取り組み方を身につけていくことではないだろうか。

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この3番目。耳が痛いです…。

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[ストレスコーピング]
ストレスコントロールを原則として個人の内部で行うことがコーピングである。これは対処するという意味である。

回避に失敗すると、場合によっては、無意識下に処理されて心身症の発症を招くことにもなりかねない。また、心理的防衛がうまく働かず、神経症的な不安状態を引き起こすことも少なくない。

したがって、一時的には負荷が増加しても、ストレスに向き合うことが結局のところ、健康的な解決につながるものといえよう。
これは「気づき」と呼ばれるもので、
自分がどのような状況でストレスを感じているのか、
自分のどのような点がどういったストレスに弱いのか、
以前に同様の状況はなかったか、
などと内省してみることである。このような自問自答こそが、ストレス対処として非常に有効な力を持っている。一人でうまくいかなければ信頼できる周囲の人に話を聴いてもらったり評価してもらったりするのもいいだろう。

このようにして乗り越えられた体験は、それを繰り返すうちに経験として貯えられ、まさしストレスに打たれ強くなるという「ストレス耐性の強化」につながるのである。これこそが人生の知恵といってもよいだろう。
「自分これこれのストレスに弱い。以前はこうやって乗り越えたから今度もそうしてみよう」といった取り組みが積極的に行えるようになれば十分である。

そのうえで、合理的回避行動として、いわゆるストレス発散のさまざまな工夫が必要となる。

四つのR:Rest(体の安らぎ)、Refreshment(体の活性化)、
    Relaxation(こころの安らぎ)、Recreation(こころの活性化)

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